A型事業所(ホテル清掃)を5日間体験してみた話【発達障害・ASD/ADHD/HSP】

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発達障害を含めた精神疾患を患っている人が利用できる「就労継続支援A型事業所」。

気になってはいるけれど、自分に合っているのかわからない、なんとなく怖さもある——そんな人も多いと思います。

この記事では、「働きたいけれど怖い」という葛藤を抱えている方に向けて、実際に僕が体験したA型事業所(ホテル清掃)の様子を書いていきます。

結論からいうと、かなりいい経験になりました。ただし、今までしてきた仕事の中でダントツ1位で大変でもありました。仕事経験がある僕でも、工夫しながら1日1日メンタルを整えてなんとか5日間を乗り切った——その様子をご覧ください。


この記事で分かること
  • A型事業所を体験してみようと思った理由
  • なぜホテル清掃を選んだか
  • ホテル清掃業務について

目次

A型事業所に興味を持ったきっかけ

A型事業所に行こうと思い立ったきっかけ

A型事業所を体験してみようと思ったきっかけは、主に次の2つです。

  • ブログをやっていて思うように収入が出ず、資格を取る資金などをつくりたいと考えた
  • 昔より人への怖さがなくなってきた

ブログの資金・資格の壁

発達障害のある身でいくつか仕事をしてきて、雇用される働き方は向いていないと感じることが多くありました。これは、発達障害のある人ならほとんどが感じることだと思います。

そこで在宅ワークで暮らしていくことを考えてブログをはじめたのですが、これが思ったようにいかない。収入が出ないことも悩みでしたが、収入を生むための知識も、特に地方にいると簡単に手に入りません。

周りの人に聞いてもほとんど分からないし、学校やセミナーを探してみてもほぼ都会での開催。資格も1万円〜とコストがかかるものばかりで、このままでは前進しない感覚がありました。

まずは事業所で収入を得て、ブログの足がかりにしようと考えたのがきっかけです。

人への怖さについて

在宅ワークにこだわっていた理由のひとつが、「人への怖さ」です。ASDのある方なら共感してもらえる部分ではないでしょうか。

僕はさらにHSPでもあるので、細かい業務ひとつとっても一般の人より多くの「理由」を必要とします。周りがなんとなくで納得している流れについていけなくなったり、「昔からこうだから」に納得できずモヤモヤし続けたり……そうした理由でうまくいかず、仕事を転々としていた時期もありました。

ただ、その「人と違う」ことへの怖さが最近薄れてきたと感じるようになりました。はっきりした理由は言えないのですが、自分なりに3つほど心当たりがあります。

①家トレ(ホームトレーニング)

体を鍛えてスタイルが変わると、自分への自信が生まれます。人からの印象も変わるし、この時期にはじめて彼女ができたことも大きかったかもしれません。コミュニケーションに難しさを感じるASDにとって、それはかなり大きな出来事でした。

②食事療法(糖質制限)

僕は「糖質をうまくエネルギーに変えられないタイプ」で、普通に食事をすると頭が重くなり、思考がかなり鈍くなります。鼻づまりや血糖値の乱高下なども悩みでした。

炭水化物を抜いて油でエネルギーを摂取するようにしてから、それらの症状が緩和されました。頭で考える余裕が生まれたことで、人との会話にもついていけるようになってきた気がします。

③病院の作業療法

精神科・心療内科には「作業療法」という外来サービスがあります。デイケアよりもっと緩やかで、僕が通っている病院では次のような利用スタイルでした。

  • 家から特定の場所へ通えるようになるための訓練のような位置づけ
  • その時間の中で自分が選んだ作業をするだけ
  • 1回2時間、遅刻・早退OK

ノルマなし、完全に自分のペースで通えます。

はじめて利用したとき、「周りのペースについていけない自分」にとって、こんなにちょうどいいサービスがあるのかと感じました。無理に他の人と関わる必要もなく、作業療法士さんが話しかけてくれる環境で、少しずつ会話のリハビリをしながら人と関わる余裕ができていきました。


ホテル清掃を選んだ理由

A型事業所の4つの業務からどれを選択するか考えている

地方なので事業所自体が少なく、見学できた仕事は以下の2つだけでした。

  • ホテル清掃
  • 病院のリネン回収

他のA型事業所は定員だったり、情報の段階で自分には向いていないと感じたりしたので除外しました。

ホテル清掃を選んだ理由

  • 他の人とあまり干渉しない仕事だったから
  • 見学中の雰囲気から「やれそう」と手応えを感じた(怒号・叱咤などがなかった)
  • ホテルが数年前に改装したばかりで、環境面でも問題がなかった

リネン回収を選ばなかった理由

  • 作業場所のすぐそばで業務用洗濯機が動いており、聴覚過敏のある自分には耐えられなかった

発達障害を知らない人が聞いたら「楽な仕事を選ぼうとしている」と見えるかもしれません。でも僕の中では真剣に考えた選択でした。これをやりきれれば、収入面でも、就職できるという自信の面でも、新しい道が見えてくると考えたからです。


A型事業所 5日間の体験記

A型事業所に通所すると、実際に雇用契約を結ぶ形になります。体調が不安定で休みがちになると成り立たないため、体験では5日間(1週間分)を通して、体力や体調に問題がないかを確認します。

体験したのはビジネスホテルで、事前に知らされていたルールは以下のとおりです。

  • 髪色は黒
  • 服装は指定のパンツとシャツを使い回す
  • 着替える場所はないので仕事の服装で出勤
  • ホテル内の自販機は使用不可・飲み物は持参

その他、カーディガンの丈など細かい制約がとにかく多く、客商売として納得できる部分もある一方、そこまで縛る必要があるのかと感じるものも。発達障害の僕としては、この時点ですでにちょっと抵抗感がありました。

なお、勤務時間は9:45〜14:10、休日は月・火。拘束時間が短いのは好印象でした。


1日目:意外とできたと実感

さっそく特性からくるすれ違い

初日、窓口スタッフから「9:35にホテル前に来てください」と言われていたのですが、行ってみると窓口スタッフでも清掃専門スタッフでもなく、見知らぬおじさんが……。後で事業所のスタッフだと分かりましたが、そういう変更は事前に伝えてほしい。

ASDはコミュニケーションの特性上、「当日にどんな人と関わるか」を事前にイメージして準備します。大まかにでいい、という定型発達の感覚が、発達障害からするとかなり抵抗があります。

ホテル内へ——質問攻めとの戦い

バックヤードで他の利用者さんと軽く挨拶し、その日の部屋割りを報告されます。みんな当然のようにメモ帳を出しているのですが、それも事前に聞いていなかった……こういうことは先に言っておいてほしいものです。

HSPの「深く理解したい」という特性から、普通なら聞かないような細かいことも質問しまくりました。たとえば「風呂の掃除はどこまでやればいいか」など。教える側がテキトーにやっていいとは言えないのは分かっていますが、ハッキリさせないと仕事が手に付かないのを過去の経験から知っていました。

発達障害への理解がある事業所だからこそ質問できると踏んでいましたが、担当のおじさんスタッフからは「おかしいやつ」みたいな反応が……。事業所でもまだ発達障害への理解は十分ではないようです。

作業自体は初日なりにこなし、少し時間は押しましたが、なんとか終了。

帰宅後

帰ってからも頭がスパークしていましたが、疲労よりも充実感のほうが大きかった気がします。「今まで仕事でできなかったことができた」という感覚——個人的には初日をやりきれた達成感がありました。


2日目:体験中のメンタルピーク

2日目は初日より仕事を理解している分、自分でやってみる部分が増え、かえって大変でした。初日と違うフロアを担当したこともあり、HSP的には質問したいことが山ほど出てきて、頭がパンクしそうな状態に。

不幸中の幸いで、2日目の担当が見学時に対応してくれたスタッフの方だったため、この日は定時に終わることができました。

帰宅後——神経が休まらない

仕事は終わったのに、帰宅してからも一向に落ち着けない。疲労というより、神経が休まらない感覚でした。

自分なりに分析すると、「まだ分からないことが山積みな状態で、スピードを求められるホテル清掃を通しでこなす」ということを2日目にして任されるスピード感に、気持ちがついていけなかったのだと思います。3日目くらいまで教わる立場でいたかったのに、2日目からそれなりの仕事量を求められて、常に緊張した状態が続きました。

この日から翌日にかけて実践したメンタルケアは以下のとおりです。

  • 腹式呼吸
  • 寝る前のピラティス・ヨガ
  • YouTubeで自律神経を整える音楽を聴く
  • ノートに今日の感想・自分の状態を書く
  • AIとの対話で状態を伝え、1日を振り返る

正直、これがなかったらかなりやばかったと思います。他の利用者さんがどうやって乗り切っているのか、本当に尊敬します。


3日目:心の震えと立て直し

メンタルケアを続けても、翌朝起きたとき、まだ体が震えていました。2日目の午後から3日目の朝が、精神的に最もきつい時期でした。

一瞬「欠席の連絡を入れようか」と迷いましたが、「通所するしないにかかわらず5日間やりきろう」と決意して出勤。

この日の前半は「はじめての大浴場清掃」で、ほぼ教えてもらうターン。そこでメンタルを整える余白ができ、後半はある程度慣れた作業をそれなりにこなせました。

なお、大浴場の担当は本来2日目の予定でしたが、教育担当の都合で3日目に変更になっていました。もし2日目に担当していたら……と想像するだけで背筋が凍る思いです。


4日目:5日間で一番できた日

4日目は、普段から利用者さんを見ているホテル清掃専門のスタッフの方が担当してくれました。

50代くらいの女性で、教え方は少しキツく人によっては怖い印象かもしれませんが、質問すればスッと答えてくれるテンポが心地よかった。そして、

「かいとさんは、体験の割にはちゃんとできていますよ」

という言葉をいただき、これがかなりのモチベーションになりました。


5日目:最後の難関

最終日の担当は、初日に来た「おじさんスタッフ」でした。4日目の時点でそれが分かっていたので、最終日なのに気が重かった……。

案の定、確認不足でコップを割ったり、教えながら息切れしていたりと全体的に余裕のない様子で、時間が1時間ほど超過しました。

後日、ホテル清掃用の服を返却する際に別のスタッフの方に伝える機会があり、報告できたのは良かったと思っています。同じ立場でこれから体験する人が損をしてほしくない、という気持ちが強くありました。


5日間の総括

ホテル清掃自体はハードでしたが、自分なりにコントロールしながら乗り越えた経験として、確かな学びになりました。

もし引き続き通所するとしたら、発達障害・HSPの特性が出てくる場面はいくつか想像できます。

  • 浴槽を掃除するとき、必要以上に綺麗にしようとして時間を消費してしまう(こだわりの特性)
  • まだまだ質問したいのに、教える人がいなくなったときの不安(深く理解したい)
  • 覚えれば覚えるほど、うっかり忘れる部分も出てきそう(注意欠陥の特性)

「おじさんスタッフ」はホテル清掃専門のスタッフではないので、日常的に関わることはなさそう——それだけが唯一の懸念点でした。

理想は、一緒に働く仲間ともちょっと話せるくらいの余裕が生まれることですが、ひとまずこの事業所の利用はキープしつつ、他の事業所も見てみようという結論に至りました。


Fitbit Inspire 3で見たホテル清掃の負荷

Fitbit Inspire 3を使って5日間(3月11日〜15日)の身体データを計測しました。A型事業所を検討している方の参考になればと思います。

歩数

Fitbit Inspire 3で計測した歩数5日分
itbit Inspire 3で計測した歩数5日分

5日間の合計は42,615歩。ホテル内がほとんどで、わずかに買い物などの歩数も含まれますが、それでもかなりの歩数です。

1日の歩数が1,000歩増えるごとにうつ病の有病率が9%低下し、1日7,000歩以上歩く人はそれ未満の人と比べて有病率が31%低いという研究結果もあります(引用:ラッフルズジャパニーズクリニック)。

普段から歩数を意識して生活していますが、時間を確保するのが大変。その点ホテル清掃は勝手に歩数が稼げる仕事で、ある意味では障害者向きとも言えるかもしれません。

直近で日常的に歩いている1週間の歩数(Fitbit Inspire 3)
直近で日常的に歩いている1週間の歩数

心拍数

Fitbit Inspire 3で計測した心拍数5日分

5日間とも、心拍数が130bpmを超えていました。僕の日常の心拍数は運動した日でも130bpmがピーク。これはいかに仕事へのプレッシャーが強かったかを示しています。

障害の特性(予想)ホテル清掃での状況
HSPによる「深く理解したい」特性時間との勝負の中で、質問しまくらないといけない
ASDによるコミュニケーション障害質問するタイミングが掴みにくい

過去の経験から「聞かないと仕事ができないまま置いていかれる」と分かっていたので、担当が大変そうでも、空気が読めていなくても聞き続けました。それは自分を褒めたいところ。ただ、心臓(心拍数)には良くなかったです。

消費カロリー

Fitbit Inspire 3で計測した消費カロリー5日分

5日間の合計は14,194kcal、1日平均2,838kcal。

普段の週間平均は14,753kcal(1日平均2,107kcal)なので、1日700kcalの差があります。

直近で日常的に歩いている1週間の歩数(Fitbit Inspire 3)

体験中はトレーニングを最低限(2回程度)に抑えつつも、この結果。4時間という拘束時間を侮るなかれ——ホテル清掃は4時間にギュッと詰め込まれたプロフェッショナルな仕事です。日頃からトレーニングしていなかったら、どうなっていたか……。


この仕事を選ばなかった理由

5日間やって達成感もありましたが、最終的にこの事業所への通所はやめることにしました。

理由は2つです。

仕事のために生きることになりそうだったから

たった4時間の仕事のはずが、1日も心が安まる瞬間がありませんでした。残りの時間がたっぷりあるはずなのに、次の日に備えることだけで精一杯——これが5日間続きました。

毎日のミス指摘が自己肯定感に影響すると思ったから

ホテル清掃には「清掃し忘れがないかのチェック」があります。ADHDの注意欠陥の特性があると、覚えたつもりでも何かが漏れやすい。毎日ダメ出しを受ける日々が続いたとき、自分への自信がどんどん削られていくのではないかという恐怖がありました。これは地味ながら大きい要素でした。

経済的にもっと切迫していれば続けるしかありません。でも今はまだ選ぶ余裕があったので、事業所を選び直すという決断をしました。


まとめ:あわてずに一歩ずつ

ホテル清掃体験を通じて感じた、発達障害に向いているかどうかのポイントを整理します。

向いているポイント

  • 拘束時間が短い
  • 人と話すことが少ない(ASD向き)

向いていないポイント

  • 制約が多く、納得できない部分もある
  • 毎日のダメ出しによる自己肯定感の低下(ADHD)
  • 質問・確認のタイミングが掴みにくい(ASD)
  • 細かい部分をキッチリ整えようとして質問が増える(HSP)

正直、自分がこれまでしてきたどの仕事よりも大変でした。発達障害や精神疾患のある人たちにやらせる仕事としては、ハードすぎるのではとすら感じた場面もあります。

一方で、「この仕事ができれば他でもやっていける」という自信はつきます。ただ、他の利用者さんたちも余裕がなさそうに見えて、プレッシャーの中で無理やり続けているような印象を受けました。

経済的に厳しく「大変でもいいから今すぐ働きたい」という場合は、利用前に以下の点を確認することをおすすめします。

  • ホテル清掃以外の作業が選べるかどうか
  • 時給が上がるシステムがあるかどうか

一歩踏み出すことは大切です。でも焦らず、自分に合った場所を選んでいくことが、長く続けるための近道だと思います。

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この記事を書いた人

ASD×HSP、各種アレルギー持ち
自分の生きづらさから来る苦労をシェアしたり、『ASDのこだわりから来る一般の人とはちょっと違ったライフハック』を同じ生きづらさを抱えている人たちに提供しようと思いこのブログを立ち上げる
国家資格を含めた11の資格を保有

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